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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
二階の物音が天井から筒抜けみてえにひびいてくる部屋だったな、あすこじゃ、おめえ、二階のオオマナビ(大学生)にドタバタやられてみろ、いやただ歩くだけのミシミシでも、すぐピーンとキンタマにひびいてきやがって、痛え、痛えと男泣きに泣かなくちゃならねえ、コーガン炎たあ、そういうもんだとおどかして、丸万はもと、旋盤工だった時分に世話になった本所の「セツル」を俺に紹介すると言う。町医者はぼられるから、もちろん駄目だが、安い病院だって、リン病は時日がかかって金を食うから、いいとこを自分が教えてやると言う。
「セツル」たあ、なんだと俺は聞いた。セツルメントの略だとはのちに俺も知ったが、そのときの丸万の説明は、帝大のえらい先生方が学生を連れてきて、ヨジシ(貧民窟)のなかで、リツ(弁護士)やシャジ(医者)のところへ行けないヒカワ(貧乏人)相手に、法律の相談や病気の診断をしてくれてるところだという。
それはセツルメント運動のひとつなのだが、そのとき俺は、インテリ嫌いの丸万に似つかわしくないことを言やあがると思って、慈善事業かとせせら笑った。偽善事業の世話になんかなりたかねえと俺はことわった。