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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
自分でやらないと、気がすまないのでもある。
工場をのぞいた俺の顔に、熱風がむっと襲いかかった。息がつまりそうな暑さだ。コシキと、工場では呼んでいる熔解炉で、鋳物の地金を熔かしているからだ。コシキで熔解した地金(これが「湯」である)をユクミで運んで、鋳型にそそぐ。その熱が工場のなかにこもって、工場全体が熔解炉みたいなのだ。
俺は工場にはいらないで、外に立っていたが、おやじはその俺に気づくと、
「なんだ、この忙しいときに……」
俺をそうどなりつけた――と思ったが、なに、そのしかめ面に、そう言わせていただけだ。だが、俺はまさにどなられた感じだった。
そしてすぐ、おやじは、
「塩をくんな。塩を!」
と今度はほんとにどなった。
土俵場の柱にとりつけた塩入れ、あれとそっくりのものを、若いハタラキが、おやじへ捧げた。全くそれは、おそるおそる捧げたという恰好だった。
熱気で顔はおろか、裸の上体も真赤にした、まるで阿修羅みたいなおやじは、塩をむんずと掴むと、力士が土俵に塩を派手にまくみたいに、土がむき出しの工場の地面に、大半の塩をばらまいて、手に残ったほんの僅かの塩を口に放りこんだ。