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イデオロギーがいろん

イデオロギー概論

戸坂 潤

第四章 文化社会学の批判「文化社会学」同文館、1932(昭和7)年4月5日<br>第五章 知識社会学の批判「思想 第101~103号」1930(昭和5)年7月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,000 字 · 316 页

青空文庫

即ち、意識といい無意識といい、一見全く個人心理にぞくするものには違いないが、両者の区別を与えるものとして、個人心理以外の世界がそこで役割を果している。人々は自分では意識することなしに、社会条件――遺伝・習俗・道徳・法律其他――によって抑圧されたものを、意識から遠ざけ、社会によって強制されたものだけを意識の上に齎らす。云い直せば、意識とは社会によって解放され又は強要された限りの無意識である。だから、意識はその意味に於て社会と等価物であり、之に反して無意識の――少くとも抑圧されたる――一部分は非社会性を有っている、と云っていい。

無意識に関してフロイトはエスと自我とを区別する。前者は人間の精神の内にある非人格的な・生物学的な・深みを云い表わし、後者はこのエスの表面にあって、外界からの刺戟に対する抵抗壁の役割を有つ。エスは無意識であってその一部分がかの抑圧された無意識であり、自我はかかるエスの他の一部分を占めていてその限り無意識にぞくする。自我は併し、それだけではなく同時に前意識をも亦包括している。無意識的なものが意識的になることを抑圧するものは、とりも直さずこの自我なのであった。