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ちょうさきかん

中井正一評論集

中井 正一

中井正一『中井正一評論集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:調査機関、図書館に生きる道、図書館の未来像、二十世紀の頂における図書館の意味、脱出と回帰、探偵小説の芸術性、芸術の人間学的考察、美学入門、絵画の不安、スポーツの美的要素。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,229 字 · 256 页

青空文庫

たにちがいない。ちょうど、一生を、穴倉のような巨船のオールを漕ぐ部屋で、鞭と刑罰の中に、過ごす人たちの、唯一の生きる楽しみは、歌とリズムであったのである。あの船が、マルタ島に近づいた時、橈の音よりも、歌声のほうが、さきに聞こえてきたとユーゴーが『レ・ミゼラブル』の中でいっている。

このヴォーリンガーの先生である、リーグルという学者は、ギリシャで初めて「内面的な寂しさが現われはじめる」といっている。獲物を共に狩り共に食った共同体から、奴隷制に移った時、人々が自分たちは一人一人なのか、と自分の周囲を見回したであろう。なぜともわからない不幸と寂しさが周囲に、みなぎったのである。かつて、共に分けて食った楽しかった「モイラ」これは分け前という意味だったのであるが、いつの間にか「運命」という意味の、悲しい翳を盛ってきたのである。エスキロスの戯曲のどれもが、運命悲劇といわれたのもこのゆえである。

この奴隷制、封建制の時代は、このわけのわからない不幸への嘆き、正しいものが、苦しむことを描き、それと共に泣くことが、芸術の一つの流れとなっているのである。悲しい時に泣くことも、一つの救いである。