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ごじゅうのとう

五重塔

幸田 露伴

「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页

青空文庫

始末に、さてものっそりは気に働らきのない男と呆れ果てつつ、これ棟梁殿、この暴風雨にそうして居られては済むまい、瓦が飛ぶ樹が折れる、戸外はまるで戦争のような騒ぎの中に、汝の建てられたあの塔はどうあろうと思わるる、丈は高し周囲に物はなし基礎は狭し、どの方角から吹く風をも正面に受けて揺れるわ揺れるわ、旗竿ほどに撓んではきちきちと材の軋る音の物凄さ、今にも倒れるか壊れるかと、円道様も為右衛門様も胆を冷やしたり縮ましたりして気が気ではなく心配して居らるるに、一体ならば迎いなど受けずともこの天変を知らず顔では済まぬ汝が出ても来ぬとはあんまりな大勇、汝のお蔭で険難な使いをいいつかり、忌々しいこの瘤を見てくれ、笠は吹き攫われるずぶ濡れにはなる、おまけに木片が飛んで来て額にぶつかりくさったぞ、いい面の皮とは我がこと、さあさあ一所に来てくれ来てくれ、為右衛門様円道様が連れて来いとの御命令だわ、ええびっくりした、雨戸が飛んで行てしもうたのか、これだもの塔が堪るものか、話しする間にももう倒れたか折れたか知れぬ、ぐずぐずせずと身支度せい、はやくはやくと急り立つれば、傍から女房も心配げに、出て行かるるなら途中が危険い、腐ってもあの火事頭巾、あれを出しましょ冠っておいでなされ、何が飛んで来るか知れた