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ごじゅうのとう

五重塔

幸田 露伴

「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页

青空文庫

其十七

ことを小うるさく耳の傍で口説きます、ハハハいやはや話になったものではありませぬ、え、茶袋とは母親のことです、なに酷くはありませぬ茶袋でたくさんです、しかも渋をひいた番茶の方です、あッハハハ、ありがとうござります、もう行きましょう、え、また一本燗けたから飲んで行けとおっしゃるのですか、ああありがたい、茶袋だと此方で一本というところを反対にもう廃せと云いますわ、ああ好い心持になりました、歌いたくなりましたな、歌えるかとは情ない、松づくしなぞはあいつに賞められたほどで、と罪のないことを云えばお吉も笑いを含んで、そろそろ惚気は恐ろしい、などと調戯い居るところへ帰って来たりし源太、おおちょうどよい清吉いたか、お吉飲もうぞ、支度させい、清吉今夜は酔い潰れろ、胴魔声の松づくしでも聞いてやろ。や、親方立聞きして居られたな。

其十七

清吉酔うてはしまりなくなり、砕けた源太が談話ぶり捌けたお吉が接待ぶりにいつしか遠慮も打ち忘れ、擬されて辞まず受けてはつと干し酒盞の数重ぬるままに、平常から可愛らしき紅ら顔を一層みずみずと、実の熟った丹波王母珠ほど紅うして、罪もなき高笑いやら相手もなしの空示威、朋輩の誰の噂彼の噂、自己が仮声のどこそこで喝采を獲たる