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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
水涕を洲の立った半天の袖で拭きながらはるか下って入口近きところに蹲まり、何やら云い出したそうな素振り、源太早くも大方察して老婆の心の中さぞかしと気の毒さ堪らず、よけいなことし出して我に肝煎らせし清吉のお先走りを罵り懲らして、当分出入りならぬ由云いに鋭次がところへ行かんとせし矢先であれど、視ればわが子を除いては阿弥陀様よりほかに親しい者もなかるべきか弱き婆のあわれにて、我清吉を突き放さば身は腰弱弓の弦に断れられし心地して、在るに甲斐なき生命ながらえんに張りもなく的もなくなり、どれほどか悲しみ歎いて多くもあらぬ余生を愚痴の涙の時雨に暮らし、晴れ晴れとした気持のする日もなくて終ることならんと、思いやれば思いやるだけ憫然さの増し、煙草捻ってつい居るに、婆は少しくにじり出で、夜分まいりましてまことに済みませんが、あの少しお願い申したいわけのござりまして、ハイハイ、もう御存知でもござりましょうがあの清吉めがとんだことをいたしましたそうで、ハイハイ、鉄五郎様から大概は聞きましたが、平常からして気の逸い奴で、じきに打つの斫るのと騒ぎましてそのた