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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
「築地へ行ってくれ」
三人が並んでクッションに腰かけると、明智が行先を命じた。車はたちまち走り出す。
「築地と言いますと……」
神谷はせき立てられるままに、まだ行く先も知らなかったのだ。
「むろん高梨の家ですよ。おわかりですか。君は今、どこから僕の家へいらしったのです。築地の高梨家の前からではありませんか。その君に尾行してきた男があったとすれば……途中ですれ違いに見つけて跡をつけるというのは少しおかしいですからね……その男は高梨家から君をつけてきたと思わなければなりません。君は気づかれないつもりでいても、先方ではちゃんと君の挙動を監視していたかもしれませんよ」
「高梨家の人が、僕をですか」
神谷は、明智の考えがあまりに飛躍的だものだから、妙な混迷におちいって、あとで考えると恥じ入るような愚問を発した。
「そうですよ。ああ、君はあの熊井という男をすっかり信じきっているのですね。無理もありません。あの男は蘭子さんの護衛を勤めていたほどですからね。しかし、悪魔の誘惑は、どんな所へでも伸びて行くのです。現に大都劇場の配電盤係りが恩田のために買収されていたという例もあるくらいです。