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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
それに、ここの主人というのが果たして恩田だったのでしょうか」
神谷は諦めわるく尋ねるのだ。
「それは間違いありませんよ。ごらんなさい。これはその寝室の小さいテーブルの上に残してあった賊の置き手紙です」
やっぱり手帳のきれっ端に、「明智君、一と足違いだったよ。お気の毒さま」とぶっきらぼうな走り書きがしてあった。
「するとあいつは、先生がここへ来られることを、ちゃんと知っていたのですね」
神谷が驚いて言った。
「そうです。敵に取って不足のない相手ですよ。だが、実に残念なことをしましたね。これほど智恵のまわるやつですから、いくら探したって、逃げた先を暗示するような手掛りが残っているはずはありません。われわれは一とまず引き上げるほかはないのです」
「ですが、蘭子はいったいどうしたのでしょうか。まさかだまって連れて行かれるはずはありませんが」
「それですよ。僕がさいぜんから心配しているのは。しかし、こういうことになっては、僕なんかの個人の力よりも、組織的な警察力にたよるほかはありません。僕たちは、すぐにあの車で警視庁を訪ねましょう。そして、捜査一課長に会いましょう。