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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
それには、明智が獣人恩田に変装しているのが、もっけの幸いではないか。
「面白い。そういうことなら、何をノメノメこんなやつらに捕まるものか」
明智はかえって勇気百倍した。「魔術には魔術をもって」一つ鼻をあかしてやろうと考えた。
彼は逃げるのをやめて、鉄管のまん中にうずくまった。そして、背後から近寄る足音に聞き耳を立てた。
来る、来る。荒い呼吸が聞こえる。コンコンと鉄管の壁に当たる物音。敵は二、三人の様子だ。
「おい、確かにこっちへ逃げたぜ」
「構わねえ、まっすぐに行ってみろ」
シュウシュウというささやき声だ。
先頭の黒い影が、ムクムク動いてくる。そして、三尺ほどの距離になったとき、ハッと明智の影に気づいて身構えした様子だ。
「誰だっ、そこにいるのは?」
少々おびえたような掛け声である。
明智はだまっていた。だまったまま、右手の握り拳をかためて、相手の胸板とおぼしきあたりに狙いを定めていた。
「返事をしねえな。さては貴様だな。おい、やっつけろ」
黒い影が風のように飛びかかってきた。
待ち構えていた明智の拳骨が、ハッシとばかり相手の胸を撃った。倒れる相手にのしかかって行った。