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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
「おい、押えたぞ。確かに人間豹だ。手を貸してくれ。おれはみんなを呼び集めるからな」
そうルンペンめかして叫んだのは明智小五郎自身であった。彼が押えているのは、とっさの当て身に眼を廻した先頭のルンペンだ。それとも知らぬあとの二人は、声に応じて、彼らの仲間の上に飛びかかった。二人がかりで押えつけた。
「よし、ここは引き受けた。早くみんなを呼びねえ」
言われるまでもない。明智は鉄管と鉄管との隙間に立ち上がって、大声にわめき立てた。
「オーイ、捕まえたぞお、人間豹を捕まえたぞお……」
そして二つ三つ鉄管を潜り抜けると、別の隙間に立って、同じように叫び、又その次の隙間へと、仲間を呼び集めるふうを装いながら、だんだんと鉄管の列の端へと遠ざかって行った。
ルンペンどもは明智の闇の中の声に指図されて、あとからあとから、捕物のあった鉄管へと急ぐのだ。そして、明智がソッとそとの広っぱへ這い出したときには、もうその辺に敵の影さえなかった。
明智はともかくも闇の中を市街の方に急ぎながら、ルンペンたちの不思議な襲撃について、その奥に潜んでいる意味について、烈しく思考力を働かせた。