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にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

それに、この変てこな話しぶりはどうしたのであろう。

「つまり明智小五郎だね」なんて、いつもはこんな気障な言い方をする人ではないのだが。

「それから、恩田の方はどうしたかというとね」明智はなかなか饒舌であった。「その自動車でもって、芝浦へ走ったのだよ。芝浦の水道鉄管置場に、恩田のお父さんが待ち受けていようという寸法なのさ。そこで、親子が相談の上、一人のルンペンに手紙を持たせて、明智の……つまり僕のだね、僕のいる所へよこしたのだ……」

「まあ、それじゃあなたは……」

「僕はそのとき、このうちの前をぶらついていたんだよ。そうしていれば、きっと恩田の父親が探しにくると思ってね。僕は恩田に変装して、やつの身代りを勤めていたんだからね。ところが、おかしいじゃないか。恩田の方ではこの計略をちゃんと知っていたんだ。恩田を捕えた時、僕がつい口をすべらせたもんだからね」

「…………」

文代さんはもう合槌をうつことができなかった。何かしらえたいの知れぬ恐怖が、背筋に迫ってくるようで、身動きもできなかった。

「で、僕はルンペンの案内で、芝浦埋立地へ出かけて行った。明智のやつ、今頃はおそらく、あの鉄管の中でルンペンどもの虜になっていることだろうよ。