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にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

何かしら恩田をギョッとさせるような調子があった。

「ウフフフフフ、君はまだ、負け惜しみを言っているんだね。そんな遠吠えなんぞ、なんの役にも立ちやしないよ」

(ねえ、君。君は僕がなぜいつまでも、こんな無駄口をたたいているかわかるかね……ばかに落ちついているじゃないか。いま女房を盗まれようとしている男とは見えんじゃないか……君、怖くはないのかい。僕がいま何を考えているか、君にはわかるまいね)

「畜生っ、さては貴様、ここへ電話をかける前に何か細工をしたんだな。警察か。警察へ電話がかけてあるのか」

(ハハハハ……どうだい、少し怖くなったろう。警察かもしれない。もっと別のことかもしれない。いずれにしても、君は僕の最後の罠にはまったのだよ。ハハハハハ、君、たいへん気に掛けているようだね。息遣いがここまで聞こえるよ)

「だまれ、だまれ。貴様なんかのおどかしに乗るおれじゃないぞ」

(まあ聞きたまえ。怒ったってしようがないよ。僕はね、こうして君と愉快に話している間に、君たち親子の巣窟をつきとめたのも同然なんだよ。黒い糸がね、眼にも見えない黒い糸がね、蜘蛛の巣のように君のからだにからみついて離れないのだよ。