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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
二人とも、喉がつまって、足がしびれて、そのまま気絶しそうになるのを、やっとの思いで抜き足さし足、門の下を離れたかと思うと、いきなりキャーッと悲鳴を上げて、仲見世の方へ駈け出したというのである。
警察が仁王門の大提燈の中まで捜索したのは、そういういきさつからであった。そのあいだに逃げてしまったのか、最初から若い女の幻覚にすぎなかったのか、調べたときには、むろん提燈の中は空っぽであった。
怪談は怪談を生んで、歓楽境はたちまち恐怖の巷と化して行った。昼間はともかく、夜にはいっては、一歩映画街を離れると、あの広い公園が、墓場かなんぞのようにまったく人影を見ないというさびれ方で、今や浅草公園は、遊覧客の代りに、私服刑事と、青年団員と、物好きな野次馬とで占領されたといってもよいほどであった。
ポスターの貼り出された翌朝、それらの辻々は、又別の意味で、黒山の人だかりであった。というのは、実に異様なことには、その一夜のうちに、ポスターの似顔絵がまったく一変してしまったからである。
「変だね、誰がこんないたずらしたんだろう。あっちのポスターにも同じのが貼りつけてあるよ」