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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
ている。
女は髪を櫛巻きにして、洗いざらした手拭の頬被り、紺飛白の半纏のようなものを着て、白い湯文字がまる出しだ。しかも足には男みたいな長靴下にゴム底足袋という思い切ったいでたち、見たところ職工と「よいとまけ」の道連れ、といった感じである。
その薄ぎたない職工、実は名探偵明智小五郎、「よいとまけ」はすなわち文代さんであった。
文代さんを明智探偵事務所に置いては、いつ「人間豹」の襲撃を受けるかしれたものではない、どこか安全な場所へ避難させてはという意見が多かったけれど、あの魔物にかかっては、江川蘭子の場合でもわかる通り、避難が避難にならないのだ。それよりも、いっそ主人明智の行く所へついて歩いて、その保護を受けるのが何よりも安心だし、そうすれば探偵のお手伝いもできるのだからと、文代さんのけなげな思い立ちに、明智も賛成して、かくの次第となったわけである。
「吸血鬼」の物語を読まれた読者諸君はご存知であるが、文代さんは前身が女探偵、顔は美しく姿はやさしくとも、決して明智の足手まといとなるような弱い人ではなかった。むしろ名探偵にはなくて叶わぬ名助手であったかもしれないのだ。