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にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

いくら縛られていたって、僕は明智小五郎だよ」

「アハハハハ、おどかすない。おらあ一人じゃねえよ。ここにもう一人、ちっちゃいけれど、恐ろしく強い味方がいらあね。いくら名探偵だって、身動き一つさせるこっちゃあない……おらあ命しらずの権てえもんだよ」

男は小型のピストルを、手の平の上で、ピョイピョイと踊らせながら、ふてぶてしく答えた。

「ところで、君は僕たちを一体どうしようっていうのだい。恩田は君に何を命令したんだい。二人とも殺してしまえとでもいいつけられたのかい」

明智がからかうように尋ねた。

「ウン、いずれはそういうことになるらしいんだ。だが、今じゃない。まあ、夕方までは大丈夫らしいよ」

男は歯をむき出して、憎々しく宣告した。

「ホウ、夕方まで?」

「ウン、それまでは、人間豹の方で手の離せないことがあるんでね。喰うか喰われるかっていうやつだよ」

「喰うか喰われるかだって?」

明智が妙な顔をして、するどく尋ねた。「喰うか喰われるか」、その言葉に何かしら記憶があったのだ。

「アババババ、こいつは言うんじゃなかったっけ。なあにね、ともかく夕方まではお前たちの命に別状はないっていう話さ。