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にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

神谷と弘子との仇敵は亡びてしまったに違いない。そして、後日あれほど世を騒がし、人の生き血を流した大害悪をも、未然に防ぐことができたであろう。

だが、幸か不幸か、いやいや、実もって不幸なことには、恩田の命は死の一歩手前で喰いとめられた。最後の一瞬間に救い主が現われた。

息を止めて見入っていた神谷の鼓膜に、突如異様な衝動が伝わった。眼の前の光景が、グラグラと揺れたように感じられた……銃声だ。誰かが恩田の危急を救うために発砲したのだ。

立ち昇る白煙の下を、猛獣は剥製の豹のようにピンと四肢を伸ばして、一転、二転、三転し、遂に長々と伸びたまま動かなくなった。

わずかに命を取り止めた怪人恩田は、さすがにグッタリとなって、急に起き上がる力もない。

すると、神谷の隙見の眼界へ、銃を片手にノッソリと現われたのは、さいぜん彼をこの密室へとじこめた白髪白髯の老いぼれ、恩田の父親であった。息子の危急を救ったのはその父であった。

「檻をあけたのは誰だっ、まさかお前ではあるまい。そこな娘さんか」

彼は鋭い眼を光らせて、檻の前に倒れ伏している弘子の半裸体を睨みながら尋ねた。

「そうだよ。