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にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

と二人の女がとりすがるのを、つきのけるようにして、ツカツカと、シュロの蔭のボックスへはいっていった。

「僕に用事があるそうですが」

と、酔っているものだから、少しばかりウルサがたに詰めよった。

男は、グラスも、ウィスキーの瓶も、テーブルの上に倒してしまって、恐ろしい眼をすえて、皿のビーフステーキを、めちゃめちゃに切りきざんでいたが、神谷の声を聞くと、ヒョイと顔を上げてニヤニヤと笑った。

「ええ、用事があるんです。用事というよりはお願いなんです。僕、あの子が好きになっちゃったんです。会わせていただけませんか」

案外おとなしく言われたので返事に困っていると、

「会わせてください。でないと、僕、自制力を失ってしまうかもしれません。僕を怒らしちゃいけないのです。ごらんなさい。僕の口を、僕の口を」

見ると、彼は歯ぎしりを噛んでいるのだ。奥歯をギリギリいわせて憤怒をかみ殺しているのだ。そして、じっとこちらを見つめている眼が、大きく大きくひらいて、また異様な燐光が燃えはじめた。

「だって君、それは無理じゃないか。あの子は僕の馴染なんだぜ。それを横取りしようなんて」

神谷は虚勢を張った。