轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

神谷の生得のあこがれについて、弘子はその影、蘭子こそ、やっと見つけたその本体ではないかと思われた。

神谷は多くの青年たちの競争者として、蘭子を誘い出して一緒にお茶を飲むことを楽しんだ。二人きりのドライブも、二度三度と度重なっていった。もう青年たちは、神谷の敵ではなかった。

神谷は醜い青年ではなかった。会社員とはいえ、前途を約束された重役の息子さんであった。お小遣いにも事は欠かなかった。その上、彼には気まぐれでない情熱があった。蘭子の方からも、彼にただならぬ好意を見せはじめたのは、なんの不思議もないことであった。

神谷はもう、彼女のフィアンセのごとく振舞って、楽屋も訪問すれば、自宅への送り迎えもする間柄になっていた。こっそりと、郊外の料亭などで、夜をふかしたことも、一度や二度ではなかった。

彼にとって、今の蘭子は、いわば昔の弘子の再生であった。それゆえに、弘子のことは、忘れねばこそ思い出しもしなかったのであるが、それと一緒に、あの人間獣恩田の恐ろしい記憶までが、ひとしお薄らいでしまったのは、不思議なほどであった。彼は今では、そういう怪物がこの世にいたということが、何か荒唐無稽なおとぎ話のようにさえ思いなされるのであった。