轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
暗黒劇場
廻り舞台さえ必要のないレビューの興行であったから、その時奈落には、係りの者の影も見えなかった。
舞台の下に、このような悲劇が行なわれているとも知らず、見物は身動きもせずおしだまっていた。この次には、どんな恐ろしいことが起こるのかと、手に汗を握って静まり返っていた。
すると、果たして、どこからともなく、絹を裂くような悲鳴が、場内一杯に響きわたり、その末は細く細く糸のように消えて行った。蘭子が何かしら恐ろしい目にあっているのだ。
見物席は、階上も階下も総立ちになった。泡立つ波のようなざわめきが起こった。だが、それはなんという奇怪な光景であったろう。この恐ろしい刹那、総立ちになった数千の見物は、彼らの胸騒ぎに引きかえて、その表情は、揃いも揃った笑い顔であった。セルロイド製「レビュー仮面」のほがらかなえがおであった。その数限りもない笑いの面は、江川蘭子の恐ろしい運命を、さもおかしくて堪らぬように、声を揃えて笑いこけているかのように見えた。
暗黒劇場
その夜、大都劇場の観客は、かつて彼らを有頂天にしたいかなる大レビューにもまして、華やかに、物狂わしく、躍動的な、前代未聞の大芝居を、手に汗を握り、胸おどらせながら、嵐のごとき激情をもって見物したのであった。