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のぶこ
伸子
宮本 百合子
「改造」1924(大正13)年9月号~1926(大正15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,543 字 · 466 页
……いつぞや私をお呼びになったのも、そのことに関係がありましたのでしょう?」
ミス・プラットは、彼女独特の重々しさで、Yes と云った。
「そうだったのです――あなたは感じが早い方ですね……」
伸子は、信頼に満たされて云った。
「有難う、すっかりお話ができて嬉しゅうございます。あの時はね、私の心持も定っていませんでしたし……それに、ああいう工合でそんなことを云い出すのは、私いやだったのです」
「……けれども、いつか時が来れば、そして必要なら、あなたはきっと、私に相談して下さるだろう、とは思っていましたよ。私が、及ばずながらあなたの幸福を、心から願っていることは、知っていて下さるのですものね」
伸子は黙り込んだ。彼女達の並んで坐っている前方の白壁には、外の雪明りが映っていた。雪解けが速いので、どんどん立ち昇る水蒸気の揺れが、明るく白い中にも見えた。伸子は困ったあげく、無技巧な一本調子で云った。
「――私は佃さんを愛しています」
「……そうでしょう」
「……私どもは婚約をいたしました」
「婚約を?」
穏やかであったミス・プラットは、その時思わず伸子が目をそらしたほど、驚愕の色を現した。