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のぶこ

伸子

宮本 百合子

「改造」1924(大正13)年9月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,543 字 · 466 页

青空文庫

伸子はそれっきり、細かい手紙も書かないのであった。

それから二三日後のある晩のことであった。低い生垣の外から、

「伸子さん、伸子さん」

甲高に呼ぶ女の声がした。

「そこにいらっしゃるの、伸子さんじゃありませんですか」

伸子はその時、東京から送ってよこした新聞を皆に読んで聞かせていた。外は暗く、頭の上に電燈があるので、伸子の方からは誰も見えなかった。

「どなた」

「誰だごんだ? 今頃」

祖母が外をすかしながら呟いた。

「私、飛田です。そちらへ廻ってようございましょう」

「――どうぞ」

飛田は三保という名で、東京の会社員と結婚しているこの村の人であった。伸子と親しい間柄ではなく、寧ろすきでない部であった。いつこっちに来たのだろう、なぜ訪ねてきたのだろう。一人だと思った三保が、中の口で下駄をぬぎながら誰かに云う声がした。

「さあ、お前もお上りよ、なぜ? 大丈夫よ!」

伸子は立って見た。式台に上りかけた三保のうしろに、地味な女が二人、暗い中でたたずんでいた。そして、ひどく遠慮し、もう夜が更けているから、このままお暇すると云った。とにかく三人あがることになった。二人の女は、三保の妹とその友達で、三十近い人々であった。