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のぶこ
伸子
宮本 百合子
「改造」1924(大正13)年9月号~1926(大正15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,543 字 · 466 页
「まあ」
と云った。
「だってそうじゃあないの? ねえ――なかなか飛田が放しちゃくれませんわ」
三保のヒステリックなのが誰の目にもついた。彼女は、何かに憑かれたように、白粉を濃くつけた顔の上に眼を光らせて、一人喋った。二人の同伴者があがるまいとした理由や、迷惑そうに坐ってちょいちょい伸子を見たり、三保を見たりしていた理由がわかった。気が変になりかけているのかと、伸子は少し不安を感じた。
「――この頃はずっと御丈夫?」
「いいえ、あなた、ひどい目にあいましてね」
三保は婦人科の病で手術を受け、退院するとすぐこちらに来たのだと云った。
「お父様といると、ね、ほら、どうしたってあなた――」
伸子は、三保の気持がどうかしていて、何を云っても性的なことの方にひきつけるので、黙り込んだ。二人の連れもそれが気遣いらしく、
「――そろそろ失礼しましょうよ」
としきりにすすめた。
「またひるま、ゆっくり上ってお話するとしてね、御隠居様ももうおやすみの時刻でしょうから」
「そうしましょう……伸子さんはいつまでこちらです」
伸子はおとよさんに答えたと同じ返事をした。三保は、
「まあ! あんなことおっしゃって!」