轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

のぶこ

伸子

宮本 百合子

「改造」1924(大正13)年9月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,543 字 · 466 页

青空文庫

佃は決して迷惑ではないらしい様子で、丁寧に、しかし何処やら言葉足らずに伸子の訊くことを説明した。彼は小さい手帳を出し、現代文字の標本を書いて見せたりなどした。

彼らは、二時間近く話した。佃はやがて見舞う病人があるからと云って立ち上った。

「――日本人の方?」

「ええそうです。もう大分いいのですが、毎週一遍ずつ行ってやることにしているので待っているでしょう」

丁度その頃、ほとんど世界じゅうに瀰漫して悪性の感冒が流行していた。紐育市中でも毎日夥しい患者が脳や心臓を冒されて死亡した。独逸の潜航艇が、合衆国の沿岸へ来て病菌を撒いて行ったなどという評判さえあるのは、伸子も新聞で知っていた。

彼女は佃に笑いながら云った。

「お見舞いはいいけれど、ご自分で貰っていらっしゃらないように」

すると、佃は案外真面目に云った。

「私はたぶん大丈夫でしょう、三四ヵ月前に種々な予防注射をしましたから」

「まあ、どうして?」

「Y・M・C・Aの方から、仏蘭西へ行くことにしてすっかり準備した時させられたのです。チフスや猩紅熱の。――だからうつりますまい」

彼は、重々しく云いながら、テーブルの上から老書生らしい古くさい山高帽をとりあげた。