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のぶこ
伸子
宮本 百合子
「改造」1924(大正13)年9月号~1926(大正15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,543 字 · 466 页
母には本当に、自分の云うことの意味が解っているのだろうか。伸子は、自分が、謂わば勘当されるということより(これはなぜかちっとも実感に訴えて来なかった)母の、自身の激越性を制御できないような姿を見ることの方が堪えがたかった。彼女を不幸な人と思う気さえした。伸子は、優しく、
「まあ、そう一飛びにお考えにならないでもいいわ」
と云った。多計代は、それを辱しめのように感じたらしく、涙をはらはらこぼした。
「私にとてもそんなことは出来まいと高をくくっておいでだろう。――私には覚悟というものはあるからね。そう見くびっては貰いますまい。一旦云い出したからには、……会いたくて、死にそうになったって、願って来てくれとは云いません」
空虚のような静寂が拡がった。すると、いきなり、佃が儀式張って畳に手をつき、母に挨拶した。
「――ではやむを得ませんから……どうぞお体をお大切に……」
伸子には、すべてが信じられず、わざとらしく、変に感じられた。何でもないはずのことを、行きがかりで、仰々しく、悲壮らしく振舞っているような落着かなさ。同時に何とも云えずがらんどうな、火の消えたような気持。