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のぶこ
伸子
宮本 百合子
「改造」1924(大正13)年9月号~1926(大正15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,543 字 · 466 页
などと、自分もすどおりに通り過ぎた。
「なるたけなら、第二会場の方も今日見てしまいたいと思いますからね」
伸子は、老人が気を張って足を早めたり、見たいかも知れないのに、強いてつまらないものと定めてそのまま過ぎたりするのを見ると、気の毒でたまらなかった。土産話にもなるように、ゆっくり、満足に、見物させたかった。彼女は杖がわりの洋傘を持ちなおし、佃のあとに跟いて人波をかき分けようとする老人に云った。
「私どもは、ゆっくり行きましょうよ、迷児になっても大丈夫よ……いそぐとお疲れになるから」
池の端で、彼らは万国街に入った。舞台には、椰子の生えた海辺の背景が置かれ、その前に裸体へ草の腰蓑だけをつけた女が二人現れていた。黒い剽悍そうな縮毛の頭に花環飾りをのせ、胸にも同じような花飾りを吊っている。傍に腰かけた黒人の男の音楽者が、白ズボンの片脚でドタドタ床を鳴らしつつ、バンジョーとウクレリーで、南洋的な、官能的な音楽を奏す。それに合せ、女達は並んで手を叩いたり、足ぶみしたり、腕を動かしたりしながら、ぶるぶる、うねうね体中の筋肉を顫わせた。三十越して見える肥った方の女の体は、特別人間離れしてよく動き、腰蓑の上につき出ただぶだぶの腹などは、遠くからでさえ、上へ下へ、右、左へ、音楽につれてくねくり廻るのが見えた。