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のぶこ

伸子

宮本 百合子

「改造」1924(大正13)年9月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,543 字 · 466 页

青空文庫

毎年ある期間季節風が吹く、それはこんな勢いだということを示したもの」

次のは、幾本もの大木の梢が皆一方へねじまげられ、片側は丸坊主に枯れたようになっている写真。

「――関係がわかりますか?」

伸子は面白くなってきた。彼女は、熱心に見較べ、

「ええ、判った! 判った!」

と叫んだ。

「それから」

六枚の写真は、毎年の季節風のため、満州のある地方の樹木が発達を阻止され、一定の法則をもって変化する。畸形になる。その経過の研究なのであった。

「――これは、ずっと先に集めて置いた材料でしょう?」

「――十年近くなるかね」

「……しかし、同じ研究でも君のはいいね。僕の方はやりきれない。何しろ事実材料をディッギング・アウト(掘り出す)するのだからね」

「日本じゃ駄目かね」

「――貧乏暇なしさ、食わなけりゃならないからね」

写真をまた繰り返し眺めていた伸子が云った。

「――食べなけりゃならないのは誰だって同じよ。十人のうち九人九分までそうだわ」

「そうです」

佃は、不意な伸子の言葉で、感情を害したらしく云った。

「しかし、僕の研究では、教師にもなれないからね」

「自分の専門で教師をしたって君、楽じゃあないよ。