轻松读懂日语经典作品
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
「改造」1924(大正13)年9月号~1926(大正15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,543 字 · 466 页
一時停滞した人波は再びのろのろ動き出す。文明を爆発させた野蛮な力が露骨に四方から迫って来て、伸子は怖ろしくなった。
「ね、どっちかへ抜けられないでしょうか、私帰りたい」
「待っていらっしゃい。――トトトト、どうもこの騒ぎだからね。さ、今のうち! 早く!」
やっと向う側の歩道へすり抜けた刹那、右手の横町から、どっと喊声があがった。
「なに? 喧嘩?」
平野は、前の男の帽子の鍔に顔をぶっつけながらのび上って見た。
「――偉いものを持ち出したぞ、カイゼルの藁人形を担いで来たんだ」
苦心して、伸子は人の間から覗いた。成程、高い竿の先に、古洋服やボール紙で作られたカイゼルが見馴れた髭を傾けて担がれて来た。胸に「地獄へ行け!」と書いた札が下っている。担ぎては、巧に竿を振り上げたり寝かしたりした。それにつれて、カイゼルは悲しげに面白可笑しい身振りをする。大喝采のうちに、人形はわっさ、わっさと辻の中央に運ばれた。
「焼いちまえ!」
「さっさと巴里へ行っとくれ」
「軍国主義を焼きすてろ!」
上気せあがり、舌がひりついたソプラノで刺すように絶叫した。
「悪魔! 私共の子をかえせ!」