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のぶこ
伸子
宮本 百合子
「改造」1924(大正13)年9月号~1926(大正15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,543 字 · 466 页
いつか彼と自分とは肉体も一つにするであろう。一対の男女として取扱われたら、どんなに便利が多いかということは、今でも十分察せられた。しかし、結婚ということに到ると、漠然とした重苦しさ、狭さ、凡庸さ、不安の感がいつも伸子を襲った。人間は結婚すると、なぜああも、人生のあるゴウルに達したように落着いて、世間と調和的になってしまうのであろう。多くの男女が、何か自分ならぬ者に導かれるようにして、一生をいつの間にやら過して行く。自分が結婚し、そんな風にこの世を送ってしまうのは、伸子はいやであった。結婚して子供が欲しいという気もなかったし、良人がいわゆる立身をして、某夫人と云われたい慾も、彼女にはなかった。佃には佃の仕事がある。自分には自分の仕事がある。そして、経済的にも、伸子は彼を稼ぎてとしなければならない必要はなかった。彼と生活をともにし、互に扶け合い、一緒にやってゆきたいのは、ただ、互の愛をまっすぐ育てられる位置において二人が、より豊富に、広く、雄々しく伸びたいからだけなのであった。愛し合う男女にとって、結婚が唯一のものなのであろうか。男女の愛は、本来が、そういうちょっと狭くるしいような性質のものなのであろうか。