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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

「動物を虐待するのはよし給え」

と戒めた。

「何でい?」

「何でいとは何ですか? この犬だって君達と同じように、棒で叩かれゝば痛いです」

「余計なお世話だ」

と一人の子が尻尾を縄で縛ろうとした。

「よし給え」

と私は其奴を押し退けて、もう一人の子の持っていた棒を奪い取った。

「君は先生か?」

「先生じゃないけれど、可哀そうじゃないか? 分らないことを言うと堪忍しないぞ」

「何でい?」

「撲るぞ」

「撲って見ろ。さあ、撲れ」

と三人は詰めかけた。私は棒を振り上げた。しかし模範生は窮屈だ。撲れば操行が乙になる。

「さあ、学校へ来給え」

と言って引っ張るぐらいが関の山だ。

善行は先生に褒められても、同輩や後輩に喜ばれない。却って交際の邪魔になる。私は追々それを覚り始めた。

「お母さん、僕は友達がなくって困ります。皆が遊んでくれません」

と度々訴えた。

「暴れる子供とは遊ばない方が宜いよ。庄ちゃんと徳さんに寄ってお貰いなさい」

と母親は親戚の子供を推薦してくれた。しかし庄作も徳三郎も、

「友ちゃんは学校ごっこばかりするから詰まらない」

と言って、直きに帰ってしまう。従兄弟さえこの通りだから、他人は尚更のことだ。