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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

口銭を稼ぐくらいでは追っつかない。無論それまでにはドカッと一儲けする気だけれど、慰藉料を製本料へ注ぎ込んで貰わなければなるまい。これは断って置かなかったけれど、こゝに書いて置けば、妻が後から読んでくれる。

僕の小説はもう可なりセンセーションを捲き起しているのらしい。未だ発表しないから、無論一般的ではないが、妻を初めとして書かれる人物が深い関心を持っている。

「君、お手軟かに願うぜ」

と今朝も菊太郎君が言った。取引所へ出掛ける時だった。

「いや、侃々諤々、筆は決して曲げない」

「兎に角、僕の家庭に風波を起すようなことは書かないでくれ給え」

「無論悪意はないんだから安心してくれ給え。しかし自分で蒔いて自分で刈る分には仕方がないよ」

「それは何の件だい?」

「向う脛が疵だらけだから、直ぐに笹原が走るんだ。悪いことは出来ないよ」

「一体、何の程度まで素っぱぬくんだか、見当がつかない。打ち合せのために一遍読ませてくれないか?」

「大したことはないんだよ」

「いや、請判を頼んだことなんか書き立てられると信用に関係する」

「どうして知っているんだい?」

「妻から聞いたよ」

「奥さんが読んだのかい?」