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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

菊太郎君は虎の門で女学生を見初めたのだった。注意を学問に払わないで妙な方面へ向ける。心得が違っているから仕方がない。この兵隊さんとしては照尺を良家の令嬢につけたのが寧ろ目っけものだ。その頃、虎の門に女学校があった。そこの生徒ということが分ったから、菊太郎君は僕を毎日虎の門から日比谷公園へ引き廻したのだった。

「日比谷公園は真の附け足しさ。しかし唯虎の門と言ったんじゃ幾ら君でも感づいてしまう」

「幾らとは何だい?」

「済まない話だが、幾ら人の好い君でもって意味さ。もう斯うなれば何も彼も打ちまけて、只管御同情に縋る」

「僕はこれで自分の間抜けさ加減が分ったよ。有難う」

「この通りあやまっている」

「それから何うしたんだい?」

と僕は忌々しくて少し語調が荒かった。

「或日、律子の取っている婦人雑誌を見たら、名家令嬢鑑というところに、その女学生の写真が出ていたんだよ。それで○○保険の矢田さんの令嬢ってことが分った」

「雑誌の口絵に出るくらいなら相応シャンだろうね?」

「シャンとも」

「大きな声を出すなよ。馬鹿だな」

「ハッハヽヽ」

「何も可笑しかない。それから何うしたんだい?」