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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

「主人は厳し過ぎますから、斯ういう時に間違いが起りますわ。あなた、お叱りになっちゃ駄目ですよ」

「叱るものかね」

と市※さんは充分理解しているようだった。

「それでは何分宜しく」

と僕はもう逃げ腰になった。

「恐れ入りますが、菊太郎に直ぐ帰るように仰有って戴きます」

とお母さんは甘い。

間もなく高野君がポツ/\と活動し始めた。先ず市※さんへ再三招かれて、矢田家について知っているところを答えた。市※さんは流石に堅い人だと感心して、その都度僕と丸尾さんに話の内容を報告した。それからイヨ/\橋渡しをすることになったが、市※さん同様念を入れる人だから、いつも切出し兼ねて帰って来た。尤も商売で行った序に、それとなく気を引いて見て、調子が好かったら話込むようにという註文だった。

「御主人と奥さんと両方御機嫌の時にしようと思っても、何方か必ず悪い。それというのが、御主人が買いなら、奥さんは売りだろう。奥さんが買いなら、御主人は売りだろう」

と高野君が説明した。

「いつも同じことを言っている」

と丸尾さんが貶しつけた。

「昨夜は御主人が特別悪いんだ。売りだろう。そこへ持って来て相場が高い。