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かちうんまけうん
勝ち運負け運
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页
そこでその晩、僕は高野君について乃木坂の矢田家へ乗り込んだ。高野君が予め電話で打ち合せたら、差支えないということだった。
「この方は金万の若旦那で、先般申上げました市※の若旦那の親友でございます。先般お願い申上げましたお話について伺いましたから、何分宜しく」
と高野君が用件まで明瞭に紹介した。
事務取引が先だった。高野君の予言の通り、矢田さんは満悦らしかった。
「今夜は些っと御褒美を出さなければなるまいかな?」
と言った。これに反して奥さんは、
「何うもこれはお年貢になりそうね。主人の直観も案外馬鹿になりませんわ」
と忌々しそうだった。昨今の相場では追敷が年貢になるに定っている。
「僕の店も堅実一方ですから、何うぞお引き立てをお願い申上げます」
と僕は何となく具合が悪かったから冗談を試みた。
「いけませんよ。人の縄張りへ来て宣伝なんかなすっちゃ」
と高野君が本気になって慌てたので、大笑いになった。
それから僕は直ぐに切り出した。
「突然で失礼ですけれど、僕、市岡君とは特別関係ですから、御推薦の為めに上りました」
「恐れ入ります。実は高野君からお話を承わったまゝ延び/\になっているものですから」