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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

「兎に角、此方から註文をつけて、その人でなければ叶わないとなると、親も大変、仲人も大骨折りだ」

「…………」

「先方へ行っても、一々御機嫌を取るんだから、気が引けて困る」

「しかしお父さんは議論をなすったというお話じゃございませんか?」

と僕は話題を換えることに努めた。嫁は親の当てがい扶持という家憲に記名調印を迫られては、それこそ大変だ。親父が諺を連発する時はお説法の支度だから、大いに警戒を要する。

「それは問題が違う。商売論だ」

「何ういう商売論でございましたか?」

「素人が株式投機に手を出しても見込がないから、おやめなさいと忠告してやった」

「それは少しお立ち入り過ぎはしなかったでしょうか? あすこでは御夫婦とも好きでやっていらっしゃるんですから」

「しかしこの上とも御交際を願うんだから、黙って見てはいられない。斯ういう議論さ。俺等は年中場に出て商売にやっていながら容易に儲からない。それを相場表ぐらいを頼りにして、遠くから電話をかけて儲けようってのは己惚が強過ぎる。好いことのある筈はありませんよと道理を説いて聞かせたけれど、笑っているんだ」

「道楽にやっていらっしゃるんですから、干渉なさらない方が宜いでしょう」