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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

それは先刻見かけた加藤さんの令嬢の面影だった。

「何うしたんだい? それから」

「うむ。そう/\」

「急に考え込んでしまったじゃないか」

「居候なんだ。主人じゃないんだ」

「まだ居候も主人も出て来やしない。奥さんがお嬢さんに代って取次ぎに出たところだ。それから?」

と菊太郎君が促した。

「その令嬢が何処となく豊子さんに似ているんだ」

「ふうむ」

「実に綺麗な人だった。君は矢っ張り豊子さんに似ているんだね。君から豊子さんを思い出して、豊子さんからその人を思い出した」

「豊子に似ている人が綺麗で、僕が豊子に似ているってのは大賛成だ。エヘン」

「これはいけない」

「しかし余裕綽々たるものだね。千円も倒されていながら、そこの家の娘を美人と見届けて来るんだから胆が据っている」

「そこの主人が倒したんじゃないんだ。居候にやられたんだ」

「ふうむ」

「奥さんが引っ込むと今度は主人が出て来た。驚いたよ。いつもの人と違うんだ」

と僕は話し続けたが、斯ういう倉皇の際に佳人を発見して来るのだから、菊太郎君の言う通り、その方面だけは胆が据っているのかも知れない。

翌朝、丸尾さんは僕の報告を聴いて、これあるかなと言ったような顔をした。