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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

好いところへ目をつけた。これも僕が逃げられたお蔭だろう。

「片や金万、片や市※、何方も若主人が腕利きらしい」

という評判が立った。二人は顔を見合せて、快心の笑を洩らした。

「両花道って次第ですね」

と店員達が煽てた。周囲が団栗の丈較べだから、すぐに頭角を露す。優良若旦那の好一対、お神酒徳利として認められたのは夙にこの頃からだった。調子に乗って、手張りも熾んにやったが、大きな損はしない。小さい中に見切ることを覚えた。夏に入ってからは当りつゞけて、僕は母親に一反百円の薩摩上布を買ってやった。高いものについていると親父が言ったけれど、親孝行には相違ない。菊太郎君は同じ値頃のを久子さんに着せた。これは女房孝行だ。一寸豪勢なものだったが、秋が立つと共に二人とも忽ちペチャンコになってしまった。しかし蓄めてあったのを悉皆吐き出したから、大した迷惑はかけなかった。親父が縁起をつけた通り、上布が高いものについた。好い後はどうも悪い。その代りに悪い後は大抵好い。福の裏に禍があって、禍の裏に福がある。

或日、僕は友人から結婚披露の案内状に接した。矢張り同級生だった。親しい同級生の結婚が菊太郎君とこの男を合せて、もう三口に達している。