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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

ある見識を捨てゝこそ認められるのである。僕はこれでも大いにある方だ。捨てろと言うくらいだから、菊太郎君もチャンと見ているのだ。そこで僕は翌晩、菊太郎君と一緒に小柴君の家庭を訪れて、一部始終を物語った。去年の暮から小柴君の披露会までに亙って、可なりの長講だった。文子夫人にも残らず聴いて貰って、悉皆見識を落してしまった。

「僕としては一も二もないんだけれど、お父さんは株屋が嫌いだと言うんだ。困ったな、これは」

と小柴君は首を傾げるだけで、一向友達甲斐を示さない。

「何うして株屋が嫌いなんだろう?」

「投機的の商売だからさ。危いと思っているんだ」

「仲買人だぜ。投機をやるのはお客さんだ。僕達は売買の仲介をして、手数料で食っている。扱う品物が証券で相場の変動が激しいから、素人目には危いように見えるかも知れないけれど、石炭屋金物屋と同じような手堅い商売だ。又然うなくては立ち行かない」

「手張りなんか些っともやらないんだ」

と菊太郎君は余計なことを言う。

「手張りって?」

と小柴君はすぐに問題にした。

「張るのさ。自分の手で」

「チョク/\やっているんだろう?」

「いや、やっても真の小遣取りだ」