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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

「何だい?」

「覚えが好いと言って褒められるものだから、何でも覚えているような顔をするのよ。でも、そんな嘘を言ったって通りませんわ」

「本当に覚えているんだよ」

「覚えてなんかいませんわ」

「喧嘩をしちゃ駄目よ」

と母親が制した。錦子姉さんは僕と競争の積りだった。これは偶もって、僕の頭が年以上だったという事実の証明になる。

「証拠を見せようか?」

「見せて御覧なさい」

「この間、遠足の時、夜明けに起きたら、東の空が紅かったから感心した」

「当り前よ、そんなこと」

「雲が五色の色をしていて、普段と違うものだから、何だか初めてこの世の中へ生れて来たような心持がした」

「生意気なことを言うのね」

「それで僕は矢っ張り朝生れたんだと思ったんだ。然う思うのは覚えているからだろう? 覚えがなければ、思い出せない。何うだい? 参ったろう?」

「参りませんよ」

「一寸こんなものだ」

「どんなもの? 知らなければ教えて上げるわ。嘘は泥棒の初まりよ」

「錦子もお黙り。日出男や、お前も姉さんを馬鹿にしちゃいけませんよ」

と母親は二人を押し静めて、

「日出男や、それは、お前、お前の名前が日出男だからよ。