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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

お互に名乗り合った。山本君は商大を卒業して、その宿屋へ婿養子に入ったのだ。菊太郎君は成金振りを見せるために、茶代をウンと弾んだ。しかし敵もさるものだ。お土産を山ほど積んで、

「どうぞ奥さんへ宜しく」

と吐かした。残念なことに皆箱根名物と銘が打ってある。菊太郎君は日光へ行ったのだから、一品も家へ持って帰ることが出来なかった。

小学時代の思い出は面白いけれど、考えて見ると、僕は方針を誤ったような気がする。学問は素より好きな道でない。そこへ持って来て、勉強すれば喧嘩だと言うのだから、菊太郎君を無二の良友と思い込んでしまった。無論菊太郎君だって悪いことはない。しかし此方と全く型が同一で、意気投合し過ぎた。同じ色彩が濃くなるばかりだった。矢張り友達は多少毛色の異ったのも変化のために必要だ。そうでないと、長短相補ってお互に啓発し合う切っかけがない。若し鮫島君あたりと附き合っていたら、僕だってこれで相応の学者になっていたろうと思う。学問なんてものに重きを置くのでないが、多少あっても邪魔にはならない。妻の長兄は法学博士だ。その次が大学の助教授で、これも早晩博士になる。