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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

妻は自分の身内と僕を違った人種のように考えている。此方だって○○大学を出ているんだけれど、それは一向認めてくれない。甚だ癪だ。兜町の人間は金さえ儲ければ宜いんだと言って聞かせたら、

「あなたはいつお儲けになりましたの? 御自分が御損をなさるばかりでなく、兄にまで損をさせたじゃありませんか?」

と妻は食ってかゝった。法学博士は堅人だが、経済科の助教授は山気がある。僕が銀行に預けて置くよりも早いと言って勧めたら、新東を買って、本当に早いところをやってしまった。

「兄さんでも分っている」

「何でございますか?」

「金儲けのむずかしいことがさ。株で損をするところを見ると、兄さんの経済学は死学問だろう」

「あなたは御損をさせた上に悪口を仰有るんですか?」

「いや、兜町の荒浪を乗り切るのが本当の学問だ」

「そんなことがあるものですか?」

「ある。有らゆる社会科学の原則と実際が分っていれば、株で損をする筈はないんだ」

「それじゃあなたも学問がないんですわね」

「うむ。生きた学問が足りないんだ」

「株と学問は違いましょう」

「違わない。兜町こそ生きた学問だ。僕は時々損をするけれど、この信念は動かない。