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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

実力は僕の方が上だから、菊太郎君がついて来られない学校へ入ってやる。それには府立に限る。然う考えているところへ、先生が志望学校を訊いてくれたから、僕は府立へ行きたいと答えた。

「はてな」

と先生は首を傾げた。

「駄目でしょうか?」

「今までの成績じゃ府立は少しむずかしいかも知れませんよ」

「実力でやります」

「学校の成績が実力です」

「違います。先方へ行って試験を受けるんでしょう?」

「その試験がむずかしい」

「試験なら実力です。僕は今まで成績の方は市岡君と約束があったから嘘ん気でした。しかし実力の方は一番勝負ですから本気です」

「何だか分らないことを言い出しましたね」

「実力で府立を受けます。宜いでしょう? 先生」

「結構です。受けて御覧なさい。しかしもう二つ三つ余所を志望して置く方が宜いですよ」

「何故ですか?」

「府立へ入れなかった場合、一年後れます」

「用心ですね。大丈夫です」

と僕は主張したけれど、先生が勧めてくれたので、別に私立の宜いのを二つ選んで願書を出して置いた。菊太郎君は私立を四つ志望した。実力のない奴は自信がない。四つやって置けば何処かへ引っかゝるというのらしい。