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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

屹度立派な人になれますわ」

とお世辞を使った。

「ふん」

「何あに?」

「鼻で扱っているんです」

「まあ!」

「もう斯うなれば恐れるところはないんです」

とそれが僕の心境ありのまゝだった。嫁に来て貰いたければこそ、今まではお説法も喜んで聴いていたが、もう御機嫌を取る必要がないから、万事対等だ。

「怖いわ、急にお強くなったから」

「毎日鰻の頭を食っているんです」

「でも、少し御勉強なさる方が宜いでしょう?」

「いや、兵隊です。これでやる時はウンとやるんですから」

「やるとも。ウンと儲けるんだ」

と菊太郎君が調子を合せた。どういう料簡だか、僕が豊子さんと話す時は必ず側に控えている。烏に頼まれたのかも知れない。

「日出男さん、あなた、律子を貰ってくれません?」

と或時豊子さんが言った。

「僕は駄目です」

「何故?」

「お嫁さんを貰うほどの成績じゃありませんから」

「厭味ね」

「ハッハヽヽ」

「都合ってものがあるのよ。世の中は」

「それはありましょう、自分勝手の都合が」

「思い合っていたって必ずしも一緒になれませんわ。それだから小説ってものがあるんでしょう?」

「さあ」

「都合はつまり神さまよ」