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ちきゅうとうなん

地球盗難

海野 十三

「ラヂオ科学」1936(昭和11)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 页

青空文庫

奇妙な甲虫

二人は、いつしか手を取りあって、幼いときによく歌った歌を思いだして、声をそろえて歌ってゆく。しかしこのとき武夫もお美代も、行手にあたって胆を潰すような怪異が彼等を待っていようなどとは、夢にも知らなかったのである。

奇妙な甲虫

櫟林は巨人群像のように、逞しい枝を張り、生々した梢を大空の方にグッと伸ばしていた。膝を没するような雑草を、バサバサと踏みわけながら、武夫とお美代とは、奥深く入っていった。

「お美代ちゃん。この缶を持ってて」

武夫は甲虫を入れるためにもって来た缶をお美代の手に渡した。それはビスケットの入っていたブリキ缶だったが、甲虫が息の出来るように沢山の穴が明けてあった。

「ああ、あすこに見える。……」

「もっと奥の方に、大きいサイカチの木があってよ」

この櫟林の奥の方にゆくと、甲虫の棲んでいるサイカチの木が六、七本あることを二人は知っていた。甲虫は、その樹の割れ目から流れだすジャムのように甘い赤味のある汁を吸って生きているのだった。

「ああ、そこにある木が一番大きい。あの木には、甲虫がウンといるぜ」

武夫はチラリとお美代の方に目配せすると、サイカチの巨木にヒラリと飛びついた。