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きょうふおう
恐怖王
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年6月~7月、9月~10月、1932(昭和7)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,038 字 · 133 页
そして、黒瀬は彼自身を手短に紹介した。それによると、彼は岡山県の田舎の者で、父から仕送りを受けて、絵の勉強に出て来ている、美術学生であった。
「それはよくこそ。御承知の通り、僕はあいつにはひどい目に合っているのですから、恐怖王の正体をあばくのに参考になることでしたら、喜んで伺いますよ」
「あなたは、あのゴリラ男の外に、恐怖王と名乗る元兇がいるのだとお考えですか」
「無論そうだと思います。あの野獣みたいな男の智恵では、こんな真似は出来っこはありません」
「そうでしょうね。僕もそう思うのです。ゴリラというのが僕の知っている奴だとすると、そいつは子供程の智恵もないのですからね」
「あなたはどんな関係であいつを御存じなのです」
「僕の親父が、香具師の手から買取ったのです。そして、十何年というもの、僕の家で飼っていたのです」
「飼っていたんですって?」
蘭堂はびっくりして叫んだ。
「エエ、飼っていたんだよ。あいつはね。どうも純粋の人間ではない様に思われるのです」
黒瀬は恐ろしい事を云い出した。
「今度警察へとらえられても、檻の必要があるというのは、つまりあいつが人間ではないからです。