轻松读懂日语经典作品
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きょうふおう
恐怖王
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年6月~7月、9月~10月、1932(昭和7)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,038 字 · 133 页
鳥井青年
実に不思議だ。
気の迷いかしら。何か奇妙な偶然が、わしにあんな幻視と幻聴を起させたのかしら。それとも、なき娘の幽魂が、冥途をさまよい出て、夜の暗さにまぎれ、懐しい父に逢いに来たのであろうか。
庄兵衛氏は、通り魔の様に、彼の目をかすめて消え去った娘の姿を、何と解釈してよいのか、途方にくれてしまった。
余り馬鹿馬鹿しい様なことなので、自宅に帰っても、夫人の園子に打明けることを差控えた。つまらぬことを云い出して、又母を泣かせるでもないと思ったからだ。
「お父さま、助けて……」と叫んだ娘の声が耳について、ひどく気掛りではあったが、まさか、こんな夢みたいな話を警察に持込んで、捜索を願う訳にも行かぬので、庄兵衛氏はきっと幻覚であったに違いないと、強いても忘れる様にした。
鳥井青年
だが、不思議はそれで終らなかった。四五日たったある朝のこと、照子の嘗つての許嫁鳥井純一が、顔色を変えてやって来た。銀行へ出勤の途中、態々寄道をして、頭取の宅を訪れたのだ。
丁度その時庄兵衛氏は習慣の朝湯に入っていたが、急用と聞いて、いそいで湯殿を出て、応接間へ出て来た。
「実に不思議なことが起ったのです。