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きょうふおう
恐怖王
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年6月~7月、9月~10月、1932(昭和7)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,038 字 · 133 页
一体の造りがまるで現代のものではない。
二人は真暗な玄関を上ると、ジメジメとした畳を踏みながら、奥まった座敷へ、棺を運んで行った。
書院窓のついた、十畳の座敷だ。その部屋丈けは割に明るい電燈が下っているけれど、うす黒くなった襖、破れた障子、雨漏りの目立つ砂壁、すすけた天井、凡ての様子がイヤに陰気で、まるで相馬の古御所といった感じだ。
電燈の光で、二人の人物の風采が明かになった。葬儀車を運転して来た男は、額が狭くて鼻が平べったく、口が馬鹿に大ぶりな、ゴリラを聯想させる様な、実にひどい不男で、それが髪の毛丈けはテカテカとオールバックになでつけている様子は、ゾッとする程いやらしい感じだ。汚れた黒の背広、ワイシャツはなくて、すぐメリヤスシャツの襟が見えているという、安自動車の運転手らしい服装だ。
もう一人は、黒天鵞絨のダブダブの服を着て、長髪をフサフサと肩までさげ、青白い顔に黒ガラスのロイド眼鏡をかけ、濃い口髯を生やした、見た所美術家という恰好である。
「流石は君だ。よく怪しまれなかったね」
ロイド眼鏡が部下を労う様に云った。
「ナアニ、訳もないこってさあ」