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きょうふおう
恐怖王
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年6月~7月、9月~10月、1932(昭和7)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,038 字 · 133 页
片手美人
はつきものだ。今更驚くことはない。
「それじゃ、一度僕に、お嬢さんの居間を見せて頂けませんか」
蘭堂はまるで玄人の刑事探偵みたいなことを云って、椅子から立上った。
片手美人
京子の居間は、十畳程の洋室で、一方の隅には彫刻のある書きもの机、廻転椅子、書棚等が置かれ、別の隅には、贅沢な化粧台、又別の隅には大きな竪型のピアノが黒く光っていた。
蘭堂は伯爵夫妻とその部屋に這入って行ったが、流石は探偵小説家、まず絨氈に目を注いだ。
焦茶色に黒い模様の、深々と柔かい立派な絨氈だ。彼はその上を歩き廻って、注意深く調べていたが、ある箇所に立止ると、ヒョイと身をかがめて、
「これは何でしょう?」
と、その部分を指で押し試みた。
絨氈が黒っぽいので気附かなかったが、よく見ると成程、ボンヤリと大きなしみが出来ている。
蘭堂は、人差指に唾をつけて、強く絨氈をこすって、その指を電燈にかざして見た。
「ごらんなさい。血です。やっぱりそうだった」
彼は青ざめた顔を、激情に歪めて云った。
「エ、血ですって? では京子はもしや……、アアあなたは何もかも御存知なんでしょう。早くおっしゃって下さい。