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きょうふおう
恐怖王
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年6月~7月、9月~10月、1932(昭和7)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,038 字 · 133 页
と、一人で喋りつづけて、こちらの返事も聞かず電話を切てしまった。
決してただのいたずらではない。京子の身の上に何か起ったのだ。
蘭堂は直様外出の用意をして、花園伯爵邸へかけつけた。途中で、ふと、これが賊の手ではないか。何かしら陥穽が用意されているのではないかと考えたが、そんなことを顧慮している余裕はなかった。ただ京子の安否が息苦しい程気遣われた。
行って見ると、伯爵邸はもう寝静まっていた。伯爵は旅行中なので夫人を起して貰って電話の次第を話すと、夫人は、
「娘はよくやすんでいます。わたし先刻見廻って来たばかりですの」
と、けげんらしい顔つきだ。
では、やっぱりただのおどかしに過ぎなかったのかと、一応は胸なで卸したが、併し、念の為にと云うので、夫人と一緒に、もう一度寝室へ行って見ることにした。
部屋の入口にがんばっている書生に尋ねると、これも別状ないとの答えだ。
二人は鍵のかかっているドアを開て、ソッと寝室に忍び込む。
見ると大きなベッドのまわりには、天井から蚊帳の様な薄絹が垂れて、その中にスヤスヤ眠っている京子の顔が、うっすりと見えている。
「よくやすんでいますわ。