轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
川手氏は我が耳我が目が恐ろしくなった。重なる心痛の為めに、視覚や聴覚に異状を来たしたのではあるまいか。イヤ、視覚聴覚ばかりではない、脳細胞そのものが病気に罹っているのではないだろうか。こんな山の中の独居がいけないのかも知れぬ。このままここにいては、気が狂ってしまうような不安を感じた。
川手氏はそこで、老人に話して東京の宗像博士に、火急に相談したいことが出来たから、直ぐお出でを乞うという電報を打つことにした。そして博士の判断を求め、その結果によっては別の場所へ居を移そうと考えたのだ。
午後になって博士からの電報が到着した。明日行くという返事である。川手氏はその返電に力を得て、やっと気分を落ちつけることが出来た。そして、その晩寝につくまでは別段の異変も起らなかったのだが……
しかし、川手氏は遂に宗像博士に会うことは出来なかった。博士が来なかったのではない。川手氏の方が城郭から姿を消してしまったのだ。その翌朝、老人夫婦は旦那様の蒲団が空っぽになっているのを発見した。早朝から庭でも散歩しているのかと、庭内を隈なく探したが、どこにも姿はなかった。座敷という座敷を見て廻ったが、川手氏は屋内にもいなかった。